Project Flower ブログ

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最上

私はプログラマーを本職とする前は自動車メカニックをしていた。

自動車メカニックというのは業態にもよるが、直接客と接する、意外と神経を使う仕事である。

ある時、あまりにボロい車を車検に出してきたお客さんがいて、直さなければならない箇所を計算したら修理代は20万を超えた。

お客さんにその事を説明すると、返ってきた返事がこうだ。

「20万もかけたら、車が買えてしまうだろ!」

20万で車に乗れると思っているのは愚かだ。

20万で買えるような車はすぐに乗れなくなるか、あちこちが壊れて必ずそれ以上のお金が必要になる。

中には不人気で相場がその位の車種もあるかもしれないが、それでいいならそういう車に乗ればいい。

とにかく客というのはこちらが考えている水準より低い考え方をするので、うんざりだった。

それはソフトウェア業界でもそんなに変わらない。

プロプライエタリなソフトウェアを複製して使う方法を調査させられたり、聞いた事もないような使途不明な書類を作らされたり。

バカな客とは付き合いきれない。ずっとそう思ってきた。

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話は変わるが、私は散髪には美容院に行っている。

腕のいいお気に入りのスタイリストが立て続けに二人も辞めてしまい(寿退社で)、残念だなあと思っていたところ、その日はいつも見かけない違う人がシャンプーをしてくれた。

その人のシャンプーが、今まで経験した事のない素晴らしい施術だった事に驚いた。

美容院でのシャンプーは自分で手を出す事ができないので、如何に、自分だったらこうしてほしいと洗ってもらえるかが満足度に繋がる。

いつもオプションで炭酸泉を付けてもらっているのだが、万遍なく念入りに施してもらい、実に気持ちが良かった。

かつて体験した事がないほど良かったので、思わずスタイリストの人に、あの人は誰かと聞いてみた。

「あの人はここの社長です。」

衝撃的だった。

美容院でのシャンプーは、大抵、アシスタントと呼ばれる人がやってくれるので、見習いつまり下っ端の仕事だと考えていた。

そんな下っ端がするような仕事が一番上手いのが、社長だったのだ。

どういう事なんだろう。

私は前述のようにバカな客と接するのが嫌なので、いずれ独立して社長にでもなって、そうしたら面倒臭い客とのやり取りは下っ端にやらせてしまえ、という思いが少なからずあった。

しかしこの社長である。末端の客に真正面から向き合い、どの従業員にも負けない最高の技術を提供する事ができる。

私はカラーリングやパーマ等も頼まないし、髪を切る頻度も低いので大した儲けに繋がるような客ではない。

社長になったとしても、お金を払ってくれるのは客だ。間に従業員が入ろうと、客の満足のために真正面から向き合い、手を抜かない。

ソフトウェア業界に置き換えれば、どの社員よりも優れたコードが書ける社長といったところか。意外とそういう会社、あるかもしれない。

お気に入りのスタイリストはいなくなってしまったが、社長の心意気に惚れた私は、次もこの店に行かずにはいられなくなってしまった。