アトラスが支配していたとされるアトランティス
大きく発展したこの国は、その発展とともに人民の心が乱れたことで
神の怒りに触れ、海中に沈められたという。
中学生の頃に転校した自分は、かつての友人と手紙を送り合っていた。PC-98をMS-DOSで利用していた時代、当時は、Eメールなんてなかった。
手紙は時間がかかる。ポストは日に何度かしか集荷に来ないし、配達もそう頻繁に来る訳ではない。
でも、手紙を読むと、この人はこんな字を書くのか、こんな漢字を知っているのか、といった発見がある。これはメールでは絶対に起こり得ない。
技術の進化により、手紙を使う必要はほぼなくなった。
用件があればメールで済ませればいい。一瞬で届くし、紙とペンと封筒を用意する必要もない。
技術は進化し、様々な事ができるようになった。
できるようになったという事は、何かをする必要がなくなったという事でもある。
何か思っている事を大勢の人に伝えたければ、SNSにでも投稿すればいい。
デートで失敗したくなければ、Webで徹底的に調べればいい。
これらは、インターネットの発展の恩恵だ。
インターネットのない世界だったら、思っている事を主張したければ、新聞に投書するとか、街宣車で街へ演説に繰り出すとか、ビラを配るとか、あるいはテレビ番組に出演を申し込むとか、それなりの努力が必要だった。
デートで失敗したくなければ、モテる人にノウハウを教えてもらう。そんな人が周りにいなければ、諦めるしかない。失敗して、自分でその経験を得ることになる。
人間の周りが豊かになったことで、人間は努力する必要もなくなり、失敗を経験する機会も減っていく。
満員電車がたまに停車すると、誰一人喋っておらず、とても静かだ。
でも、新聞や本を読んでいる訳ではない。皆親指をせわしなく動かし、スマートフォンの画面とだけ向き合っている。
表情一つ変えず、LINEで愉快な冗談を言い合っていたり、2ちゃんねるで罵り合ったりしているのだ。
人間そのものは、豊かになっているだろうか。